大判例

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東京地方裁判所 昭和29年(ワ)9553号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕原告は「原被告間に成立した和解調書記載の本件室は原告の賃料債務不履行によつて解除せられ、原告が和解調書所定の明渡義務を負うに至つたとして、被告は右和解調書につき執行文の賦与を受け、執行吏に委任して原告に対し右室明渡の強制執行を強行して原告の石室の占有を奪つたから占有権に基いて明渡を求める。」と主張した。被告は国家機関のなす執行行為については、たとえそれが違法と認められる場合であつても占有権による救済を求め得べからざる旨を主張した。判決は被告の主張を全面的に肯定してつぎのように説明している。曰く。「占有訴権という制度は占有という外形的事実をそれ自体保護するに価する社会秩序の一としてこれに対する私人の強暴な侵害を、彼がその占有を自分に回収しうる権利を有すると否とを論ぜず許さずとし、かゝる侵害に対する救済を占有者に与えたものと解される。従つて占有者に対しその占有物の引渡を求め得る権利を有する者も相手方の同意なく自力でその占有を自己に移すことはできないので強制執行の方法によらねばならないこととなる。そして強制執行による引渡の場合も、占有者の意思に反してその占有を奪うという点では、私人が占有を奪う場合と同じである。けれども、この場合の強力は社会的に公認された強暴なのであるからこれに対して占有回収の訴権を行使し得ないものとされる。右の場合占有訴権が発動し得ないのは相手方が引渡を求めうる本権を持つているからではなく、右のように公認された方法による占有奪取だからである。すなわち占有者が強制執行の方法によりその占有を奪れたときは、その占有しうべき本権の有無、反対に云えば相手がその引渡しを求めうる権原を持つていようといまいとに関係なく、占有権に基く占有回収の請求はできない。」

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